京都三大学合同交響楽団

湯浅篤史 先生

湯浅篤史 先生

ーーー最初に三大オケの印象についてお聞かせ下さい。

オーケストラに対する印象? 難しいなそういうの(笑)

ーーー三大オケの指揮はいつ頃からされているんですか?

江戸末期かなあ。

ーーー江戸末期! お世話になってます(笑)

元禄・・・・・インタビューならへんな(笑)
三大オケの印象は、他の色んなサークルをやってる一般大生含めて、あるいは音大生含めてもだけれど、何かを集まってやろうという時、グリークラブであったって、オーケストラであったって基本的にそういうものは人が集まって、大勢でやらないといけない。大勢人が集まるっていうことは面倒くさい事がたくさんあるじゃない。そうでしょ?
そういうものをあえてやろう、っていう気持ちになる人は凄くやっぱり前向きな姿勢のある人たちだよね。それに、自分の事だけではなくて大勢の人間が集まらないと出来ない事なので、人の世話も出来る人? だからある意味、オーケストラには協調性のある人たちばかりが集まるっていう・・・。

ーーーいえいえ(笑)

いや、ホントそやで。
良い意味で人と調和がとれる人。将来社会人になっていく時に一番必要になってくる社会性っていうのはこういう所で培われるじゃない。だから非常に偉いなあと思うわ。
僕らはほら、サークルとか部活でオーケストラをやったことは無いので。専門の音楽の教育機関で教育をうけて、それがそのまま仕事になって・・・。自分がプロになりたいからとか、あるいはプロになって、さあこれだけ仕事したらこれだけ貰えるからっていう等価交換みたいなことでしょ?
そうじゃなくて身銭と時間を割いてオーケストラをやって。それも100人のなかの1人でしょ、演奏する時って。そういう気持ちでもってやるっていうのは、僕はすごく偉いなと思うわ。ハハハハ。
それだけオーケストラというものに魅力があるから、こうやってたくさんの人が集まるんだろうなって言う事は分かりますよ。だからそれは三大オケだけじゃなくて他の一般大のオーケストラにしても言える事かもしれないけど。ただここのオケは凄く複合的な組織でしょ。

ーーーはい。あちこちの大学から集まってます。

うん。その3つの大学を中心としてそれ以外の大学生もウェルカムなわけでしょ。日頃キャンパスで接してない人でも、このオケに何か求めてくるわけじゃない。
そういうことってやっぱりオーケストラの力っていうか音楽の力。特にソロじゃなくて合奏するっていうことの何か魅力なんだろうなって思います。

* * *

ーーーシベリウスの交響曲第2番についてどう思われますか?

シベリウスの作品はね、凄く重々しい部分が多いよね。まだ第2番は、シベリウスの交響曲の中ではちょっと明るい目だけれども、1番なんかやるとさ、どんどん暗く沈んでいくでしょ?だから、凄く格好いい部分もあるけれど、それを人前に出して、さあ!どうですか? となると難しい。
シンフォニーって小一時間くらいかかる中で重々しい部分があるじゃない。シベ2(シベリウスの交響曲第2番)の4楽章でも、ずうっと同じ事の繰り返しで永遠引きずってくるでしょ? だから演奏するのには、譜面づらよりも、お客さんを飽きさせずに聴かせるようにするという事の方がすごく難しいと思います。
それと多くの楽器の音域がわりと低いところに書いてあるので、余計に混沌としてドロドロしている部分がたくさんあって、重い。それを解析度の高いようにちゃんと聴かせられるって事に関してはオーケストラ全体のテクニックとして非常に難しいところがあるよね。
ただ、個人技としてはそんなに突出して1つのパートにすごいソロがあるということはないけれど、どのパートもバランスをとってサウンドを作っていくということが、シベリウスは難しいね。この曲だったらこのパートに名人がいたら出来る、みたいなものではなく、合奏体として最初から終わりまでずーっとでしょ。それはかえって難しいよね。

ーーー 一人ひとりではなく皆で作っていくことが大切なんですね。

うん。そうそう。だから本当に合奏のテクニックとか音の積み方のテクニックとかそういうものがきちっと出来てないと、皆でわーっとやりま したみたいなのではやっぱり良くない。

* * *

ーーー先生から見て杉江先生はどういう方ですか?

尊敬すべき大後輩やね!うーん。ホントに。
一緒に在学してたことはなくて、彼女はもっと下だけれども。まあそんなに離れているってわけでもないけれども。同じ音楽高校出身だけれども、高校の場所も僕が通っていた時っていうのは岡崎の京都会館の横にあったころだったので。もう(杉江)洋子ちゃんの頃は洛西の沓掛の方に丸々行ってからの話で。
僕が東京にいて、夏休みで京都に帰ってきたときの高校のオーケストラの定期演奏会。彼女が3年生で、コンサートミストレスでブラームスの1番をやっていてね。それは上手でね、ほんとに。高校生がこんなできるの? みたいな。二楽章のソロもそうだったし、すごく才能のある子がいるなあと思いましたよ。
彼女が東京芸大に行って、僕が仕事をしてた北陸のオーケストラにエキストラに来て、その時に何年かぶりに再会してね。バリバリ仕事するようになってきて。将来どんな演奏家になるのかなと思ってた。留学して帰ってきて、センチュリーに入って、今は地元の京都のね、京響のセカンドの副首席になって。この春からは同じように母校の学校にも教えに行くようになった。
先輩とか後輩とか言うのではなくて、どういうのかな。同じ音楽人として何か一緒にものができて非常に、僕は幸せです。

ーーー今回みたいに指揮とソリストとして共演されるのは今回で何回目なんですか?

今回で2回目。前はブラームスのコンチェルトやったね。
非常に男前なバイオリンだし。 男前でしょ?

ーーーはい。すごく格好いいですよね!

そう。一緒にやっている周りもすごく元気にしてくれるタイプ。何に対してもプラス思考だしね。すごくいいよね。
だから学生の皆もすごく良い機会になると思います。ただコンチェルトやったっていうことだけじゃなくて、一線で活躍している演奏家の人と一緒に音楽ができて。それが指揮者としてやりましたっていう事じゃなくソリストとしてね。やっぱり一緒に音を出している者同士、有形無形の良い物をたくさんくれるのではないかなって思ってる。

* * *

ーーー演奏会まであと2週間ちょっとですが、演奏会に向けてひとことお願いします。
やっぱりみんな若い人たちなので、それは吹奏楽やってもオーケストラやってもコーラスやってもまあそうだけれど、みんな学年の中にいるわけでしょ? 大学って言う学年のなかにいるわけで。
君らの中でも大学終わってからもね、いろんな形でオーケストラの演奏活動続けていくんだろうけれども、この学校の学年の中で組織されてるオーケストラの本番って、僕らが高校大学の時もだったんだけれど、それから後自分がプロになって何度も同じ曲を演奏することがあったとしても、その若い時に最初に出会ったそのインプレッションって、もう忘れ難いものでさ。
だからそういうことの一番最初。若い時に初めてこのシンフォニーを何歳の時に誰の指揮でやってとかさ。その時に当時京響のセカンドの頭で弾いてたすごいおばちゃんが来て、わーっと弾いたとかさ、そういうことってたぶんもう一生忘れないでしょ?ね?
その時に演奏の出来不出来はともかく完全燃焼できるような演奏。そういうのは悔いが残らないだろうし、そういうものを皆で作れればいいなってそういう風に一番思いますね。

ーーー当日はそういう演奏できるようにがんばりたいと思います。

はい。僕もがんばりたいと思います(笑)

ーーーよろしくおねがいします。最後に演奏会に来てくださるお客さんにもメッセージをお願いします。

クラシック音楽は、オーケストラの音楽も含めて非常に普遍的なもの。大作曲家の作品というのは、流行り廃りが一切なくてさ、何十年何百年世界中でずっと演奏し続けられてるものでしょ。
クラシック音楽・・・今僕らはクラシック音楽って言っているけど、初演されたころには一番モダンなものだったわけでさ、それがずーっと世界中で演奏し続けられてる。だからそれがクラシックっていうジャンルに入っていくわけだけれども。国とか年代とか時間とかを超えるということ。今回ならロッシーニ、サンサーンス、シベリウス、つまりイタリアの作曲家とフランスの作曲家と北欧の作曲家とを3つとりあげて、年代も少しずつ違ってる。
それを今また本当に限られたこの学年の中にいる、京都で勉強している学生たちが取り上げて、やっているっていうこと。それがたとえフィンランドに行ったことなくても、フランスに行ったことがなくても。
僕はそういう事はものすごい尊い感じがするね。それはもうほんとにクラシック音楽だけ。ずーっと演奏し続けられて、ずっと受け継がれていくものなので、その中に一瞬であってもそうして100人ぐらいの人間が集まって一緒に音楽が出来たっていう事に対してね。そういうところにすごく感謝する。若い時はあんまり思わなかったんだけれど、最近すごくそういう事を思うね。
だから、そういう意味で最初の作品との出会いとか作曲家との出会い。若い学生たちの、まだ未熟な部分もたくさんあるのかもしれないけれども、そういう広い視野の中で見ていただくと、また違う色んな見方をしてもらえるんじゃないかなと、そんな気がしています。

ーーーありがとうございました!
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