京都三大学合同交響楽団

杉江洋子 先生

杉江洋子 先生

―――アマチュアや学生オケのソリストをされる機会はよくあるのですか?

杉江(敬称略))最近では、ちょうど一年前に湯浅先生が振っている祝祭オケでブラームスのコンチェルトを弾かせてもらいました。その前が、かれこれ10年くらいトレーナーをしている伊丹シティフィルでグラズノフを弾かせてもらって、ついこの間はチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルト。そしてここではサン=サーンスも弾かせていただいて。もうコンチェルトイヤーズです!
学生オケでは、東京の日本医科大学のオーケストラのトレーナーをしたり、東京経済大学のトレーナーも、もうずっとしています。
色んなそういうプロではないオーケストラでトレーナーをしてるので、そのトレーナーでいる毎にコンチェルトをやらせてもらってますね。
昔、奈良女子大学でもチャコフスキーを弾かせてもらったこともありますね。どれも色んな所にご縁があって。指揮者さんが同級生だったり、知ってる指揮者さんだっり….そういったご縁で弾かしてもらえる機会があって、それは嬉しいことですね。

―――アマチュアのオーケストラや学生オケで演奏される際、普段とはどういった違いがありますか?

杉江)一番初めに気をつけることは、テンポの揺らし方ですね。プロのオーケストラだと、さっさっさってソロについてくるでしょ。でも学生の方とやるときはやっぱり、最初はインテンポで、メトロノームを使ってきっちりとさらう事を心掛けています。それで、皆さんとコミュニケーションが取れてきて、だんだんと意思の疎通が出来てきたら好きに弾く。みなさんにもそう弾いてもらえるように弾きたいなあっと思って。そのための色んなアプローチの仕方をしています。

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―――サン=サーンスの曲の難しさや魅力を教えてください

杉江)サン=サーンスのコンチェルトを一番最初にやったのは高校生の時なんですよ。
私自身、その時から何となくフランスものっていうのが良く分からなくて。でもそれはまあ高校生だからかなって思ってたの。だけどこうやってオーケストラで仕事をし始めてからも、やっぱりフランスものってすごく難しくて。未だにフランスものってどうなんだろうって考えることがすごく多いんですよ。
ドビュッシーとかラヴェルとか他の有名なフランスの作曲家とは全く違う人なんです、サン=サーンスって。ちょっと時代が前って言う事もあるんですけど。今回サン=サーンスについてゆっくり色々本を読んだり、お友達に教えてもらったりして、フランスの”美”…美学っていうのかな。そういうもにこの間、ハッて気がついて。それで、それがサン=サーンスの良さなんだなって事に気がついたんですよね。
たとえばドイツ的なものって、第九とかに象徴されるみたいに「手をつないで皆と共に歩む」みたいな。がっちり合ってるっていうことが、ドイツ的な”美”だと思うんですよ。それが、フランス人って…お友達な感じはしませんよね。お手々つないでっていうよりも、すごく個人主義な感じがするでしょ。
フランス人っていうものがなんか孤独なのね。個人主義な感じがする。どっちかっていうと京都に近いかな。

―――京都ですか?

杉江)大阪と京都をくらべると、京都って一見フレンドリーに見えて実は個人主義だったりとかするでしょ。ちょっと閉じた感じがあるじゃない。
サン=サーンスの音楽のそういう所が出せたらなって思います。閉じていて内向的だけど、その中で私が感じる良いと思う音をたくさん使って演奏したいです。それが今回のテーマ。サン=サーンス的っていうのはどんなだろうってすごく考えたけど、でも結局私というフィルタを通してしかヴァイオリンの音はならないので、やっぱり私の感じるままに弾ければいいかな。
それでなんかまあハチャメチャにならないように(笑)右脳ばっかり使っていると、破綻したりするんで。そのへんはしっかり計算しながら、ちゃんと左脳も使いながらですね。

湯浅(敬称略))サン=サーンスってフランス人の作曲家の中でわりと日本人に分かりやすい作曲家だよね。

杉江)そう。ヴァイオリンの曲も分かりやすいんだけれど、それがコンチェルトになるとなんかこう妙にね。こっちに転調して、オクターブ下から始まって、こっから五度上がってオクターブで下がってというような、チャイコフスキーやブラームスではあまり感じなかった小賢しさっていうのか(笑)頭の良さっていうものを感じてしまって。

―――それも、サンサーンスの”美”なんですか?

杉江)そうなのかな?どうなんだろう。
なんかその小品なんかを弾いてるときには感じなかったサン=サーンスの頭の良さを感じます。そして天真爛漫なのに憧れて、楽譜一杯に音を書いたんじゃないかな。違うものに憧れるみたいに。

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―――演奏会に来てくださるお客様にメッセージをお願いします

杉江)サン=サーンスのヴァイオリンコンチェルトを聴いた!って思ってもらえるような演奏になったらいいなと思いますね。最近コンチェルトを弾く機会がちょっと多いんですけど、毎回来てくださる方っていうのがいらっしゃるんですよ。

湯浅)ファンの方がね、いっぱいいるねん!
最近も(杉江先生が)チャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルトをやったときに聴きに行ったんだけど。その帰りにバスを待ってたら、ちょっと年配のご夫婦が俺の後ろに並んでらして。そしたら、「杉江さん次の本番いつやったっけ」「あっそや。つぎ何月何日なに何々やらはるわ!それも行かんと」って二人でずっと話したはるねん。はあ、ファンがこうやって居るっていうことは凄いなあって思ってさ。

杉江)すごい!そうなの!?

湯浅)そうやねん。

杉江)わお。去年は湯浅先生とブラームスをやらせていただいて、その次にチャコフスキー。ドイツ、ロシアときて、それで今度フランスものでしょ。そういう方たちにまた私の違う側面を見ていただけたらうれしいなと思います。

―――ありがとうございました!
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